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問題となった判決は、2012年6月に亡くなった被相続人が購入していた東京都内と川崎市内のマンション計2棟。購入後、2年半から3年半で男性は死亡し、相続人は、路線価などから2棟のマンションの相続税評価を約3億3,000万円で評価。銀行などからの借入金もあり、相続税額はゼロで申告していました。
男性が購入したマンション2棟の価格は計約13億8,700万円であり、路線価の実に約4倍でした。国税当局が行った不動産鑑定評価は約12億7,300万円。路線価評価とは大きくかけ離れていました。
このため国税当局は、路線価による評価は適当ではないと判断し、不動産鑑定の価格を基に、相続税の申告漏れにあたると指摘し、計約3億円の追徴課税処分を行いましたが、相続人側が取り消しを求めて提訴していました。
財産評価基本通達には、土地や家屋などの相続財産は「時価」での評価によるものとし、またその価額は、「財産評価基本通達」の定めに従い、評価した価額によるとされています。土地については、原則として、「路線価方式」によって行われると、財産評価基本通達には記載されています。路線価は、土地取引の目安となる公示地価の8割です。
このため、現金よりも不動産を購入して相続した方が相続税が節税される傾向があり、この節税目的での不動産取得は広く行われています。
財産評価基本通達6に「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という規定があります。今回、国税当局はこの「6」を適用して追徴課税処分を行っています。
東京地裁の判決では、「特別の事情がある場合には、路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」と指摘、「近い将来に発生することが予想される相続で、相続税の負担を減らしたり、免れさせたりする取引であることを期待して実行した」と認定し、国税当局が主張する「6」の適用による不動産鑑定の価格が妥当とされました。
今回の最高裁の判決のポイントです。
・マンションの相続税評価について、路線価方式による方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき「事情」がある場合には、合理的な理由があると認められるから、基本通達6の適用による評価額には、平等の原則に違反するものではないと解するのが相当である。
・ちなみに、路線価方式による評価額と基本通達6の適用による鑑定評価額との大きなかい離については、租税負担の公平に反するというべき「事情」があるとはいえない。
・今回の相続ではマンションの購入・金融機関からの借入が行われなければ、相続にかかる課税価格の合計額は6億円を超えるものである。購入・借入が行われたことにより、課税価格の合計額は約2,800万円となり、相続税の総額がゼロ円、相続人側の相続税負担は著しく軽減された。
・マンションの購入・金融機関からの借入が近い将来発生することが予想される被相続人の相続において、相続人側の相続税負担を減じ、または免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して実行したのであるから、租税負担の軽減を意図して行ったものといえる。
・そのうえで、当該マンションについての路線価方式による評価額は、今回のような購入・借入を行わない納税者や、行うことができない納税者との間で看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきである。よって、上記の「事情」がある場合ということができる。
・したがって、合理的な理由があると認めれられるから、評価通達6の適用は平等の原則に違反しないので適法である。
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